ほしなみ☆ろぐ

茨城県取手市のピアノの先生です。このブログは2018年5月に移転しました

芸術その魅力「現代音楽入門講座」第7回(全12回)

   

NHKラジオ第2 毎週水曜 夜8:30-9:00放送『現代音楽入門講座』 講師は、現代音楽作曲家の薮田翔一氏です。

NHKカルチャーラジオ ホームページ ▶http://www4.nhk.or.jp/P1928/

現代音楽作曲家 薮田翔一 オフィシャルサイト ▶http://shoichi-yabuta.jp/

第7回【現代音楽作曲家たちの実験】

現代音楽作曲における「現実的な制約」

現代音楽では、楽器編成や奏法が変わっているものがあります。普通のオーケストラでは使わないような楽器が複数必要だったり、あまりに特殊だと、準備が大変ですよね💦予算も必要になります。

そうなると演奏されにくくなってしまうため、作曲家は演奏されやすい楽器編成などにしようとすることもあります。しかしそういった制限のもとでの作品は、小さくまとまってしまいます。

この第7回の講義では、そういった「現実的な制約」を考えない作品が紹介されました!

ということで、お待たせいたしました!?

今回は ( ゚Д゚)ぶっとんだ現代音楽( ゚Д゚) の世界でございます。

◆リゲティ作曲「ポエム・サンフォニック ~100台のメトロノームのための」

リゲティ・ジェルジュ・シャーンドル(1923-2006)

ユダヤ系ハンガリーの作曲家。

1度演奏された後2度と再演されないことも多い現代音楽界の中で、数多くの作品が演奏会のレパートリーとして定着しているすごい人。

▶第6回講義でもリゲティの曲が紹介されました

スコアには、作品成立の経緯や演奏の準備の方法などが記されていますが、音はひとつも書かれていません。

作曲家の指示どおりに速度を設定したメトロノームを100台並べて、動き始めたら曲がスタート。 速い速度に設定されたものは速く止まり、ゆっくりの速度に設定されたものは遅く止まる。全て止まったところで曲が終わります。


(↑動画は曲の途中4分あたりからです)

日本でも毎年のようにクラシックコンサートで演奏され、その他芸術祭で演奏されたり、100人の参加者が各自のメトロノームを持ち寄るイベント等も開催されたそうです。
現代音楽の限られた世界から大きく羽ばたいて行ける作品であるとのお話でした。

 

◆ヘルムート・ラッヘンマン作曲「ギロ~ピアノのための」

ヘルムート・フリードリヒ・ラッヘンマン 1935年11月27日 (82歳)

ドイツの作曲家。

楽器の特殊奏法など、それまで聴いたことのないような音を響かせる曲が多い。
(作曲家自身は「楽器によるミュジック・コンクレート」と呼んでいる)

既存の楽器が未知の音色を奏でることにより、
作曲や演奏の伝統の中で培われたその楽器の歴史的な意味が取り除かれ、
新しい文脈に置き換えられ、新しい音世界が創出される。

鍵盤をこすり、打楽器のギロのような音を奏でる曲。


この曲は大きく分けて3部からなる。
・鍵盤をこする
・ボルトをこする
・弦をこする
というように、それぞれ明確な変化をつけ、構成がしっかりしているので、聴きやすいとのこと。

 

◆ジョン・ケージ作曲「マルセル・デュシャンのための音楽」

ジョン・ケージ(1912-1992)

アメリカの作曲家。

グランドピアノの弦に異物(ゴム・木片・ボルトなど)を挟んで
音色を打楽器的なものに変化させたプリペアド・ピアノを考案。
現在は電子楽器で様々な音を作れるが、
プリペアドピアノが考案された1940年代はまだ電子楽器のない時代で、
作曲家自身が音を作るということは革新的だった。

マルセル・デュシャンは、ケージより25才年上の現代美術家です。この曲の動画が見つからなかったので、同じプリペアドピアノのための曲「ソナタとインターリュード」を貼ります。

【注意】絶対にマネしないでください。ピアノの内部には手を触れないようにしましょう!物を挟んだりすると壊れます!

 

ここまでは、まだ理解しやすい曲でした。さて、ここから本当にぶっ飛び曲です。規模の大きな曲2曲です。

◆ヤニス・クセナキス作曲「ペルセポリス」

ヤニス・クセナキス(1922 – 2001)

ギリシャ家フランス人の作曲家。

建築家ル・コルビュジェの弟子として働く傍ら、
パリ音楽院で作曲方法を学び、作曲に数学の理論を応用した方法を発案。
建築家としてもかなり優秀だったからすごい。
いったいどんな脳なんでしょう‥

宮殿跡に100台ほどのスピーカーを設置し、そこを歩きながら演奏を聴く非常に大きな規模の作品。

電子音楽は音を聴きながら作曲できることが、これまで楽譜上で試行錯誤していたのと決定的に異なる作曲法である、というお話でした。

◆シュトックハウゼン作曲「ヘリコプターカルテット」

©Boris Braunstorfinger,Berlin カールハインツ・シュトックハウゼン(1928 – 2007)

ドイツの作曲家。

セリエル音楽のような非常に厳格な作曲法も用いたし
(セリエル音楽を主導する一人でもあった)、
一方で突拍子もない音楽も作った。電子音楽の創始者。

弦楽4重奏の奏者(バイオリン2人+ビオラ+チェロ)が4台のヘリにそれぞれ乗りこみ、上空で演奏します。観客はホールで、ヘリから中継された演奏を聴くのです(@_@)

 

今回のまとめ

☆こういった作品では、音だけではなくアイデアを感じることがポイント!

☆現代音楽の作曲家は、現実的な制約を把握しながらも、突拍子もないアイデアを常に発想できるようにしている。

☆よくわからない曲でも、作曲家はその音楽で何をしようとしているのか?謎を読み解くと楽しめます。

☆シュトックハウゼン、ストラヴィンスキー、シェーンベルクは、人生の中で作品のスタイルを大きく変えた。
作曲家自身が一つの頂点を作ったと感じ、次の可能性を探して全く違う道を開いていった。

 

【コラム:打楽器と作曲家】

  • 20世紀前半、リズム主体の音楽が多くつくられ、打楽器の数も奏者も増えたため、オケの中で打楽器の存在感が一気に増した。
  • 打楽器が入ると音色が華やかになり、引き締まる
  • ピアノソロやバイオリンソロの曲は、クラシック音楽の歴史の中で名曲が作られ尽くしている。今、作曲家がこれらの名曲を作るのは大変な事だ。その点、打楽器の曲は20世紀以降にしか作品がない。
  • しかし打楽器の曲は、場合によっては奏者が即興演奏したほうが格好良いことが多い(例えばスネアドラムの名手の即興演奏など)ので、即興では出来ない音楽を作る必要がある(即興とは反対の構築的な音楽)

 

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