ほしなみ☆ろぐ

茨城県取手市のピアノの先生です。このブログは2018年5月に移転しました

芸術その魅力「現代音楽入門講座」第8回(全12回)

   

NHKラジオ第2 毎週水曜 夜8:30-9:00放送『現代音楽入門講座』 講師は、現代音楽作曲家の薮田翔一氏です。

NHKカルチャーラジオ ホームページ ▶http://www4.nhk.or.jp/P1928/

現代音楽作曲家 薮田翔一 オフィシャルサイト ▶http://shoichi-yabuta.jp/

第8回【日本の現代音楽】

第1回目の講義からその歴史を追ってきたように、現代音楽は、クラシック音楽を起源にして作られています。日本人が現代音楽を作曲する時には、西洋の音楽であることをふまえた上で、日本あるいはアジア独自の感性を元に作曲することも求められます。

「日本人にはどのような作曲が出来るのか」が、第8回のテーマです。

薮田氏が師事した、西村朗氏の作品を紹介しながら、日本の現代音楽の魅力を語ってくださいました。実際に教わった立場でのエピソードなど興味深いお話でした。

 

◆西村朗作曲「ケチャ」

インドネシアの「ケチャ」という舞踏劇から着想を得て作曲された作品。

ケチャ↓

西村氏は、この「ケチャ」や、「ガムラン音楽」など主にインドネシア、インド、仏教などに影響を受けた作品を多く作っているそうです。

 

◆西村朗作曲「2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー」

ヘテロフォニーとは?:それぞれの声部が独自の旋律をもたず、近似した旋律がずれて演奏される音楽

  • 1つのフレーズを少しずつずらす、又は変奏しながら演奏する。
  • それらを同時に鳴らして摩擦を起こす。
  • 原型は全く同じ一つのフレーズ=A子さんの怒った顔からA子さんの笑顔がにじみ出てくるような感じ。

日本の雅楽などでも、このような現象が起きているのだそうです。アジア人がどのようなオケ作品を作曲できるか?その可能性が詰まっている曲だと思う、とお話されていました。

 

◆西村朗 実験的な2作品 「モノディ」と「デュオローグ ~ティンパニとピアノのための」

残念ながらこちらは音源見つかりませんでした。代わりにスコアでも貼っておきます(;^_^A

「モノディ」は、一つの旋律をオーケストラの大編成で演奏する作品。

旋律が一つなので、一人で演奏できる音楽にも見える。それを、オーケストレーションを駆使して作曲するとどのような音楽になるか?という実験的な作品。
(オーケストレーション:オーケストラのそれぞれの楽器を効果的に使う技術)  

「デュオローグ ~ティンパニとピアノのための」は、ピアノは常に、ティンパニより低い音程を演奏するという制約のある曲。

ティンパニはそもそも低い音域の楽器なので、それより低い音域ってかなり低い音になります。さて、どんな音楽が作れるか?という実験的な作品。

 

  • 西村氏は、他のオーケストラの曲でも様々な実験をしており、成功した書法は次の曲でさらに発展させている。
    作曲順に聴いていくと、成功したと考えているものがどのようなものなのかがわかる。

 

◆西村朗作曲「蓮華化生 (レンゲケショウ)」

仏教からの着想ですね(極楽浄土への化生のことを、蓮華化生という)

やはり音源は見つからないのですが、こちらのCDには、紹介された曲がいくつか収められています。

蓮華化生 西村朗 管弦楽作品集Ⅰ

西村氏の作曲のレッスンの中で「ジャブは打たないで一発で決めろ」という教えがあったそうです。

特に、瞬間的に強い音は、小出しにしているとインパクトが薄まる。それよりも一発で決めた方が聴衆の耳にのこる。という意味で、その様な強力な音響を作り出している作品 との紹介でした。

日本人には大変なじみ深い音響で、私は聴いたときに、こんなに心の安らぐような現代音楽もあるんだ!という驚きというか、なじみ深いことを逆に新鮮だと感じました。

そして西村氏の作品中で、薮田氏が一番好きなものが、「室内交響曲第2番」の第2楽章スケルツォ だそうです。

 

◆西村朗作曲 室内交響曲第2番「コンチェルタンテ」

「室内交響曲」は、25人くらいからなる小編成のオーケストラ(室内管弦楽団やチェンバーオーケストラという)の曲です。

18世紀までの管弦楽はほとんどこの規模でしたが、ロマン派あたりからはどんどん、音が増えオーケストラの楽器が増えていきました。そして20世紀に入り、ふたたび小編成オーケストラのための作品が書かれるようになりました。

2楽章 スケルツォは、先に紹介された「ケチャ」に似たリズムで、マリンバのあのはじけるような音色が絶え間ないのですが‥それでいて静謐を感じるような、不思議な魅力があります。

私もこの曲とても気に入りまして、自分へのバースディプレゼントでCDを購入しようかと思っています♪(でも、まず最初は生演奏で聴きたい気持ちも‥)

メタモルフォーシス  西村朗 室内交響曲集

■ 曲目
[1],[2] 室内交響曲 第1番(2003)
[3]-[5] 室内交響曲 第2番 「コンチェルタンテ」(2004)
I. 導入部とメディテーション/II. スケルツォ/III. ポストリュード
[6]-[11] 室内交響曲 第3番 「メタモルフォーシス〈変容〉」(2005)

■ 演奏者
飯森範親(指揮)
いずみシンフォニエッタ大阪

■ 録音
2005年1月 ほか/大阪

◆細川俊夫「線 I」

余白の音

フルートのソロ曲です。書道か尺八か、、和の音がする。和の「音」というより「発声」「間」が日本的というのかな‥

細川氏は、書・カリグラフィーをテーマに何曲か作曲していて、毛筆で描いた書の、余白の部分を大切にしている。「余白」は、音楽では「休み(沈黙)」で表現されているとのこと。

沈黙であればあるほど、その中から出てきた音はさらに強調され力強く感じられる。その「沈黙」を、そして毛筆で描くような音を味わう というのが、ひとつの聴き方のようです。

細川先生の教え

薮田氏が、初めて細川先生の教えを受けた大学2年生の時から、今も大切にしていることがあるそうです。

それまではオーケストラの曲を書くのが偉いことだ思っていた薮田氏に、先生はまずソロ曲を書きなさいと仰ったそうです。
オーケストラの全ての楽器のためのソロ曲を書くことは、画家がデッサンの練習をするような効果があると教えてくださった。

そこでさっそく、毎日1曲を目標にとりくんだ薮田氏。
その日に作る楽器の音楽、楽譜、音源を、1日中図書館で調べ、家に帰ったらその楽器の曲をつくる。

単音しか出ない(和音の出ない)楽器は、メロディー+和音がつくれないので、意外に思われるかもしれないが難しいのだそうです。何かアイデアがないと作れないし、自分自身が何を作りたいのか探っていく必要がある。また構成の面でも装飾ができない。

そういったソロ曲を作っていき、その後は2重奏を書くというように、編成を大きくしていくことが、非常に勉強になったそうです。

 

そしてもちろん細川氏も、ここに紹介されたフルートのためのソロ曲などで目指す音楽を作ったのちに、弦楽四重奏などへ発展させているため、独奏→弦楽四重奏→オーケストラと聴き比べてみてください。というお話でした。

 

コラム【作曲家が書く音符の数】

古典派の作曲家の作品では音符の数に大きな差はありません。たとえば、モーツァルトとハイドンのソナタ、どっちのほうが音符の数が多い?と考えても「同じくらいかな」という感じ。

ロマン派の時代になり、技巧的なテンポの速い曲が出て来ると、音符の数も増えていきます。作曲家さんたちみんな、どんどん増えていくなぁという感じ。リストの楽譜は細かくて音符がいっぱいですよね!ラフマニノフも音符ぎっしり!

その後、新しい時代になるほど、作曲家によって差が大きくなってきます。

20世紀、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は少ない。ジョンケージ「4分33秒」音符がひとつもない。

リゲティ「アトモスフェール」のようにオケの各声部を分け曲では、音符の数は一気に増える。
図形楽譜になると音符があったりなかったり。(というか、音符なの?と言いたくなる)

 

では「音符の数」によって、何が変わるのかというと

1音1音の重要度が違う。

音符が多くてももちろん1音1音は大事ではあるが、少なくなると、それだけ1つ1つの音が目立つようになる→演奏家が演奏する場合にも影響することになる。

ということで、作曲家は音符の数にも注意しながら作曲しているそうで、
もし楽譜が読めなくても、音符が多いのか少ないのか数に注目してみると、必ず作曲家の個性が表れています。とのことでした。

これも面白いお話でした^^

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